メンズファッションは、極めれば極めるほど“大技”はしなくなる。ルールに基づくことで研かれていくのが、ジェントルマンの服装たり得るからだ。だが、あるカリスマが、ある一定のファッションの極みに到達することで、再び“大技”がOKになることもしばしばある。
そのうちのひとりが、ジャンニ・アニェッリである。
フィアット元名誉会長にして、超プレイボーイ。2003年に他界。GQ MENの若手読者層にとっては、ラポ・エルカーンのオジイちゃんというほうがピンと来るかもしれない。
して、彼の腕時計の付け方を見てほしい。シャツのカフの上から、豪快にハメているのである。
時計は、彼が愛用したというエベラール トラベルセトロ。日本では無名に近いが、イタリア人の時計通は知っているブランドだ。
ジャンニ・アニェッリが金属アレルギーだったことから生まれた大技だが、彼がメンズファッションの極みに達しているからこそ正解となった“大技”である。 |